ノワール(2006/12/25)

 いつものように近くの公園で散歩をしていると

 横の茂みからひょいと一匹の黒猫が飛び出した

 びっくりして立ちすくむわたしを残して

 黒猫は何事もなかったかのように前を歩き始めた

 その後ろ姿にどこか惹かれるものがあって

 少し距離を置いて後を追ってみることに

 つけていることを知っているはずなのに

 素知らぬ顔で悠々と先へ進む黒猫

 幼い頃に飼っていた猫のことをふと思い出す

 気まぐれでなかなか懐いてくれなかったけど

 でもとても大切で大好きだった小さな親友

「ノワール」

 突然の呼びかけに黒猫は立ち止まってゆっくりと振り向くと

 小さく首をかしげて眩しそうにわたしを見た