言葉って儚いね――。
彼女の台詞が耳の奥底に残っている。
でも儚いからこそ言葉じゃないのかな。
僕がそう答えると彼女は、何だか悲しいね、と寂し気に笑って見せた。
――悲しい?
言葉。
心の射影。感情の二次的産物。記号。
表現した直後から、風化を運命付けられる、遺物。
そして、最も普遍的なコミュニケーションツール。
社会的生活を送る為のパスポート。
他者との接触手段。心情の接点。
一つ一つの言葉が、五感に訴え掛ける。
新たな感情を産め増やせ、新たな言葉を産め増やせ、と。
言葉が言葉を産む――そうか、生命の営みと同じなんだ。
今ならきっと、あの時の問いに答えられる気がする。