習慣(1994/09/29)

 テスト期間で大学の講義がないある日

 ちょっとした用事で学校まで出掛けた

 自転車に乗って坂を上っていると

 なぜか君の姿があった


 中学時代のある日の事をふと思い出す


 たまたま朝早く出掛けると

 好きだった彼女が

 窓辺で静かに佇んでいた

 彼女は明るい笑顔で僕に挨拶をした


 それからの僕は

 彼女が来るのを密かに心待ちして

 毎日のように早めに家を出た

 だがそれ以後は

 僕を迎えてくれるのは無人の教室ばかり

 それでも僕は信じ続けた

 いつかまた彼女と二人きりの時間が過ごせる

 そんな時が必ず来る

 微かな希望は卒業まで続いた


 そして僕は彼女と違う高校へと進んだ


 それ以後の高校生活三年間

 僕は朝の教室を独り占めし続けた

 しかし彼女はついに現れなかった


 しばらくして僕は地元の大学へと進んだ


 やはり彼女は現れなかった


 三年目の春に

 親元を離れて一人暮らしを始めた


 そこにも彼女の姿はなかった


 しかし

 ふと気がつくと

 すぐそばに君の存在があった